福島の再生を願って  新年のご挨拶を申し上げます


~ 本年もよろしくお願い申し上げます ~



 組合員の皆様におかれましては、ご家族お揃いで希望に満ちた新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。また、年末年始を各職場で電力の安定供給をはじめ業務に従事されました方々に心から敬意を表します。

 そして、東日本大震災によりお亡くなりになられた方々に、あらためて深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。一日も早く平穏な元の生活に戻れますようにご祈念申し上げます。

<電力総連の誇り>

 昨年を振り返ってみますと、年頭の四電グループ労使新年交流会でのスピーチが思い出されます。その場で私は、「10年を一区切りと捉えると、21世紀に入り最初の10年が過ぎた。本年は、次の10年の始まりの年ということで、いつもの新年とは違う何か新しい時代の幕開けの年という感慨を覚える。・・・公益産業に携わる私たちは、これから、10年、100年とタスキを繋いでいかねばならない責任と義務がある。先輩諸氏から受け継いできた愚直で強靭な魂、DNAともいうべき素晴らしい財産を後々の世代にしっかりと繋いでいくことこそ、私たちの最も大切な価値なのだということを改めて共有しよう。」と呼びかけました。

 その時の私は、原子力ルネサンスと呼ばれたように、地球温暖化問題の解決に向けて、これからのエネルギー政策は、原子力発電を如何に活用していくかということに国民大多数の理解を得られたことで、未来に夢と希望を感じて晴れ晴れしい気持ちで満たされていました。

 それから約2ヶ月後、想像を絶する巨大津波が襲いかかった東日本大震災が発生しました。東北地方の沿岸部が壊滅状態となり電力設備も甚大な被害を受け、福島第一原子力発電所においては、まさかの炉心溶融事故に至り、全世界に衝撃を与えました。電力の安定供給は損なわれ、原子力発電の安全性に大きな疑念を与え、そして電気事業全体に対する不信や不満が一気に高まりました。福島の原子力事故以降、政治の場などで、電気事業が批判的に取り上げられる機会が増え、マスコミの多くもこれに同調するなど、今、電力業界は四面楚歌とも言える状況にあります。

 しかし、忘れてはならないことがあります。それは、あの大震災発生直後、電力設備の復旧にあたった多くの仲間は、ご自身やご家族もその被災者でした。福島の原子力事故の収束のために今日も頑張っている仲間もそうです。地震で家が壊され、津波で友を流され、家族が避難所に向かう中で、橋が落ち瓦礫でふさがれた道路を、私たち電力総連の仲間は必至で現場に駆けつけ、一刻も早く電力を復旧し事故を収束するために、身を粉にして働きました。そして、全国の仲間が被災地に入り、設備の復旧や事故の拡大防止、被災者の皆様の支援に取り組みました。今日もその努力は続けられています。

 冷温停止状態や事故の収束という言葉が適切かどうかは別として、昨年暮れには、冷却水温度が100℃以下、発電所敷地境界の放射線レベルが1msv/年以下という状態を安定的に保っていることが確認されました。これはひとえに電力総連の仲間達の献身的な努力の賜物です。私は彼ら彼女らに伝えたい、「国難を救うために福島で頑張っている仲間たちよ、君たちは電力総連の誇りです。私たちは片時も忘れず応援しています。ともに頑張ろう」と。


<謙虚に正論を貫き行動しよう>

 私たち電力関連産業に働く労働者は、日本経済や国民生活に欠かせない基幹エネルギーとしての電力の安定供給という使命を全うするために、不断の努力を続けてきましたが、3.11以降、電気事業を取り巻く環境は一変しました。

 福島の事故の衝撃と計り知れない影響を思えば、やむを得ないものと受け止めねばなりませんが、現在の脱原発依存の感情論で拙速に議論が進むとすれば、果たして日本国民は将来も幸せに暮らしていけるのだろうか?と心配でなりません。

 今、最も重要で優先すべきは、被害者への補償や除染をはじめとする原子力事故への対応と既存原子力発電所の徹底的な安全対策の実施、そして電力の需給逼迫対策です。しかしながら、政府は、電気事業システムのあり方など中長期的な課題まで一緒にして短期間で検討しようとしているためか喫緊の課題解決が一向に進まないように思います。

 これらのことは、政治家が責任を持って真剣に考えてもらわねばなりませんが、現政府の対応を見ていると、本当に信じていいのかという思いがいたします。

 「低廉な電気を安定的にお客さまにお届けし、そのことを通じて地域ひいては日本の発展に貢献する」ということが、電気事業に携わる私たちの普遍の目的であり存在意義であります。今注目を集めている原子力か再生可能エネルギーかという発電方式や、発送配電一貫体制か分離かという電気事業形態は、あくまで普遍の目的のための手段であります。

 そのことを踏まえた上で、私たちは、電力供給のプロとして60年に亘って安定供給を担ってきた労働者の立場から、電力の安定供給のための手段はこうあるべきと、自信と誇りをもって主張しなければなりません。

 電力の経営も労働組合も、これまで愚直に考え行動してきたし、今般の電力バッシングに対しても、真摯に対応していればいずれ分かってくれるはずだと信じて行動してきました。しかし、それで問題が解決するほど甘くはありませんし、国に任せていても解決しないかもしれません。

 電気事業が始まって以来の最大の試練を、私たち自身が乗り越える努力をしなければなりません。そのために私たちは、正しい認識を持ってくれる人を一人でも多く拡げる活動に積極的に取り組まねばなりません。労働組合、個人的な繋がり、身の周りの人々などあらゆるチャンネルを活かして、一人一人が、まじめに丁寧に説明をしていけば、理解者は必ず増えてゆきます。

 今年は、私たちの思い、考えを正々堂々と主張すべき時です。日本国民の平和と繁栄のためにという信念を持って、謙虚に正論を貫き行動しようではありませんか。


<統一地方選挙の勝利>

 昨年は4年に一度の統一地方選挙の年でした。昨年4月の四国電力総連組織内議員の各選挙におきましては、愛媛県議会の「玉井 敏久」氏、徳島市議会の「武知 浩之」氏両名が、難しいといわれる2期目の当選、そして高知市議会で「清水 修」氏、高松市議会で「大西 智」氏が、それぞれ初当選を見事な得票で勝ち抜き、良い形で世代交代を果たすことができました。その前段の2月には、四変テック労組出身の「庄野 克宏」氏が多度津町議会4期目の当選を果たしました。特に四国電労の4名は東日本大震災発生直後の選挙となり、原子力事故の衝撃が広がる中で後援会活動を一時自粛せざるを得なかったことや、選挙運動期間中の選挙カー活動を取りやめるなど、これまでにない厳しい逆風下での戦いとなりました。そのような危機感をバネに関係各方面の方々の多大なご支援・ご協力を賜り、四国電力総連の組織が一致協力して取り組んでいただきました。ボランティアで一生懸命に汗をかいてもらった皆様に心より感謝を申し上げます。

 それぞれ組織内議員の皆様には、地域に信頼される電気事業を担い、その地域で共存する我々生活者の代表として、今後とも地域の皆様、職場の皆様から身近で頼れる存在としてますますご活躍されるよう期待いたします。


<民主党を基軸とした支援のあり方>

 国政の状況はというと、3年前の夏に国民の大きな期待を背負って誕生した民主党政権の政治運営は、政治主導の至らなさや政策のブレ、調整力不足等が露呈し、加えて耳を塞ぎ目を覆いたくなるような、閣僚をはじめとした政府要人の稚拙な言動が続き、国民の期待を大きく裏切る状況に陥っています。野田政権が誕生して期待が高まりはしたものの、わずか4か月程で、世論調査で不支持が支持を上回り、消費税増税問題、TPPへの参加、エネルギー政策の見直しなど喫緊の重要課題が山積している中で、今年中にも衆議院解散・総選挙があるのではないかとの声も聞こえ始めています。

 とりわけ、組合員の多くの皆様が感じておられる民主党への不満は、東日本大震災での原子力事故を巡る前政権の理解し難い対応だろうと思います。未だに先の見通しが立たない状況において、民主党のエネルギー政策や議員の言動に対し、電力総連大でも厳しい意見が寄せられています。

 ただ、一方で私たちの考えや政策に理解を示していただいている議員が多くいることも事実であります。国政選挙における支援のあり方については、組合員の皆様の感情や意識を十分考慮した上で、慎重に引き続き検討していく必要があります。今般の原子力事故とエネルギー政策の見直しは、現政権への試練であり、真価が問われる正念場だと考えておりますので、組合員の皆様におかれては、政治家一人ひとりの言動をしっかりと注視していただきたいと思います。


<災害のない健康で明るい職場を>

 昨年4月以降、電力総連大においては、11名(すべて協力会社従業員)の死亡災害が発生しました。残念ながらこのうちの1名が四国電力総連における協力会社従業員の死亡災害であり、一昨年に続き死亡災害が発生してしまいました。労働災害撲滅の取り組みは出口の見えない永遠の課題かも知れません。しかし、あきらめずに安全の基本を繰り返し繰り返し徹底していくしか道はないでしょう。ただ、せめて重大災害、特に死亡災害は何としても防がねばなりません。

 安全に働くこと、健康に暮らすことは、組合員とその家族にとって一番大切なことであります。そのような職場環境をつくることは労働組合の最も重要な使命です。安全と健康は、いかなる状況にあっても優先されるべきものということを、全グループ企業の労使が高いレベルで認識を合わせておかねばなりません。協力会社等の労働者も含め職場で働く者全員の安全を、本当に強く意識しているか今一度深く考え、至らぬところを改めていく努力を怠ってはなりません。目配り・気配りに心がけ、職場で働くすべての人たちの安全と健康を、職場のみんなで守っていただきたいと思います。


<想いを声に 声をかたちに 行動に>

 最後になりますが、私は昨年の初めに、「想いを声に 声をかたちに 行動に」をモットーに取り組むと申し上げました。想いはとにかくまず声に出そう、それを形にして示し、そして最後は実際に行動しようということです。組合員の皆様の想いや声を集め大切にして、仲間のみんなとともにそれを実現していくという思いを込めました。達成できたことできなかったことがそれぞれありますが、より前進することができたものと思います。今年も同じ姿勢で、組合員の皆様とともに共感が得られる活動を進めていきますのでよろしくお願いします。

 結びに、組合員の皆様とご家族の安全と健康をご祈念申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。


 本年もよろしくお願い申し上げます。


四 国 電 力 総 連
会 長 杉 村  和 洋






四 国 電 力 総 連
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